楽しさを源としたコンサルで、その人らしさが現れる世界を創る 平手喬久(コア・インテンションCEO)

「今、自分が心から楽しいと思って関われる仕事だけしていて、ひとつひとつのパフォーマンスは高いっていう、ごきげんな状態なんです」

インタビュー冒頭、平手さんはいたずらっ子のような表情でそう切り出した。

めちゃくちゃ働く。でも、どこか幸せでない自分

平手さんはいくつかのコンサルティング会社を経て2010年に独立。経営戦略・業務改善等の経営コンサルティング・プロジェクト管理支援を行う、コンサルのプロだ。頭脳で勝負する人、というイメージとは裏腹に、しばしば見せるやんちゃな笑顔が印象的だ。

平手さんに、CCC受講前の仕事ぶりについて聞いてみた。

「当時はめちゃくちゃ働くコンサルでしたね。真夜中まで働いて、その分報酬は高い。そういう世界で生きてきたけれど、もうこのやり方は続けられない、と思ったんです。仕事自体もいろいろ大変な時期で、このまま行くのは幸せじゃない、と思った」

そんなタイミングでの基礎講座受講。平手さんは、受講を通して「意図を丁寧に立てる」ことの大切さをつかみ、それを生活の中で実践した。効果はすぐに現れた。小さい子どもを抱えていっぱいいっぱいだった毎日が、やりたいことをどんどん実行していけるように変わっていったのだ。

「できる自分」であることの代償

基礎受講を通して自らのパフォーマンスが上がったと感じた平手さんは、応用ディープ講座の受講を決めた。

応用ディープ講座では、自らの内側で無自覚に稼働している思考と感情のシステムを観察し、その根底にあるメンタルモデルを明らかにしていく。自分のメンタルモデルを明らかにする…平手さんにとって、それはどんな体験となったのだろうか。

「世界に裂け目が入ったような感覚」と、平手さんは受講時のことを振り返る。

「今までは『これをしたい』にふたをして『これをやるべき』ということをやっていたことに気づきました」

その根底にあったのが、「自分はできない人間だ」というメンタルモデルだった。それを打ち消すために、平手さんは「できる自分」であろうとし続けてきた、という。

「自分が培ってきた“勝ちパターン”っていうのがあるんです。起こり得る展開についてあらゆることをシュミレーションし、マイナスの想定については、予防策とそれが起きてしまったときの対応策を考えつくす…そういうやり方でした。これをこのままやっていたら、成果も出るし、みんなからも認められ、そこそこ収入も入ってくる。しかもそれは、辛い時期にもふんばって積み上げてきたものだから、捨てるなんて考えてもみなかった」

しかし、その行動の裏には「代償」と呼ばざるを得ない現実がいつもセットになっていたことに、平手さんは気づいた。バリバリと評価判断を下しながら仕事をし、成果は出しているもののお客さんには怖がられてしまう。フリーランスで自由に仕事ができるはずなのに、同時に「所属していない」ことへの不安におびえる。「ここは自分の居場所だ」と思いたくて、目の前にいる人の期待に応えようとする…「できる自分」でいようとする限り、こうした現実もまた続いていく。平手さんは、そのことに痛みを感じている自分に気づいた。

こんな代償を生み出しながら、自分がこれまで立てていた意図ははたしてどこから来たものだったのか。恐れからか、ニーズからか。ディープ受講を通して、平手さんはそんな問いを抱くようになる。

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自分が創りたい現実をいかに生きるか

実は、平手さんはプログラムの半ばから合流というイレギュラーな形でプロコースを受講している。そうまでしてこの講座から得たいものは何だったのか。

「メンタルモデルを扱って、自分が創りたい現実をいかに生きていくか、ということを学べる場所はここしかないと思ったんです」と平手さんは言う。

「プロコース合宿に行ってメンタルモデルに気づいて、日常生活に戻って、何が起きるかをひたすら観察して、ってやっていましたね。で、だいたい不都合だなーとかやりたくねえなーってことが起きるから、それを次の合宿に持って行って振り返って、エンパシーして、で、また日常生活に戻って、っていうのを毎月繰り返すという。そういう振り返り方は一人ではなかなかできない。プロコースには、仲間がいることの良さがありました」

そのくり返しの中で見えてきたことがある、と平手さんは言う。

「思考の限界をよく知ることができました。自分が本当に望んでいる世界を創っていく時には、思考は本当に一部でしかないんだと」

真実を知るための「鍵」

ちょうどその頃、印象的な出来事が起きた。

「これまで“勝ちパターン”って思ってやっていたことが、できなくなってきたんです」と平手さんは言う。

「いろんなパターンをシュミレーションして対策をたてまくってたけど、それは恐れからやっていたことだったんだと気づいて、待てよ、と手が止まった。違和感を感じて、これまでと同じようにはできなくなった。以前はそのシュミレーションの量が売りでもあったので、そこが変わったことで、『やっぱり今回の案件は別のかたに…』って言われちゃうこともぽろぽろ出てきました」

なじんできたやり方をやめることの痛み―。しかし、平手さんには「そのやり方はもう自分にはできない」という感覚があった。じゃあどうしたらいい?平手さんの言葉から、そんな苦しさがうかがえる。

こうした状態を経て、平手さんは何を見出したのだろうか。

「感情の大切さですね」。平手さんからは、そんな答えが返ってきた。これまでは、シュミレーションも施策に至るまでのプロセスも、至ってロジカルにやってきた。感情すらロジカルに処理している感覚があった。ところが、プロコース中のダイアログやセッションでは、未整理な感情が未整理なまま場に現れる。ふたをしていたはずの弱さが顔を出す。内側にあるものに気づき、表現し、その表現が仲間に受けとめられる…そんな体験を繰り返しているうちに、自分の真実とつながり、そこにいる仲間ともつながる感覚が生まれてきた。

平手さんは、感情の果たす役割に気づいた。感情はいつも、「それが自分にとって本当はどういう体験なのか」を教えてくれる。真実を知るための鍵は、感情にある。

「今は、コンサルの場でも、自分の中に起きる喜怒哀楽を感じながらやっています。それを隠すのではなく、あるなあ、と感じていく。そうすると、隠すことにエネルギーを割かなくていいので、自分に無理がなくなる。自己一致した状態でお客さんの前に立てるんです。思考だけでやっていた時のことを思うと、能面をかぶっているみたいだったな、と思いますね」

自己一致した真実を生きる

ここまで話を聞いていて伝わってくるのは、平手さんの「自己一致した自分の真実を生きる」ことへの強い願いだ。

「自己一致した自分の中にある真実から意図を立てることが大事なんだと思います。そうすることで初めて、実現に向けて現実が創造されていく」。平手さんはそう語る。

自分の中の真実から行動を起こそうとすると、自分の中のコンプレックスにも直面するし、痛みや揺らぎも体験する。しかし、その揺らぎも含めて体験しながら統合を進めていくと、これまでは起きた瞬間に逃げていたことも、「起きていることが起きているだけ」という受けとめ方をするようになる。

起きていることを、ただ見ること。平手さんは、プロコースを通じて、自分自身の外側も内側も観察し、受容することで統合を進めてきた。そのプロセスを経て、世界を信頼し意図の実現に向けて前進する、現在の平手さんのあり方が創られていったのではないだろうか。

その人の“エッセンス”をビジネスの中に

平手さんの現在の仕事ぶりについて再び聞いてみた。

「今大切にしているのは、その人がもっている、いちばんパフォーマンスの発揮できる“エッセンス”に気づくこと。それを生かすことができると、ビジネスの中にその人の世界が現れる。それがすごく楽しいと思って」

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コンサルタントである自分もお客さんも、それぞれが自分のもつエッセンスを存分に生かして仕事をしていく。すると、今までとは違ったパフォーマンスが現れる。パフォーマンスを上げるのは、コミットの量ではない。人間のもつエッセンスをいかにつかんで生かしていくかだ、ということに気づいた。そして、冒頭の話に出てきたように、自分が心底楽しいと思える仕事を追求できるようになってきた。

平手さんの場には、今、平手さんが本当にほしかった“喜び”や“楽しさ”がどんどん現実化している。

聞き手:八田吏(プロコース修了生)