【第三の道】じぶんを幸せにする人・幸せにする組織~常識の枠の先で生きる~ 山本敦之 ☓ 由佐 美加子

幸せに通じる道

自身が立ち上げた会社の名前に「幸せ」を掲げる程、山本さんが一貫して、幸せを追求してきたのはなぜだったのか。

大学時代から「人を幸せにする会社を創る」ことを夢にしていた山本さん。その想いを胸に、山本さんはまず大学時代に公認会計士の資格を取得し、卒業後はあるコンサルティング会社に入社した。そして証券会社に転職後は、M&Aや証券化等の投資銀行業務に従事する様になった。

山本さんのフィールドとなった金融の世界は、誰かが利益を上げた分だけ、誰かが損をしているというゼロサムゲームの強い世界。毎日深夜まで懸命に働き、それに見合った給与を受け取るも、そのお金は誰かの犠牲の下に生まれたもの。「こんなことをやっていて、一体なにになるのだろう」。山本さんは働く意味、そして生きている意味を見出せなくなっていた。しかし、回り続ける歯車を止めることもできず、山本さんは違和感に蓋をして働き続け、次第に精神的に追い込まれていった。

転機となったのは、偶然通い始めたヨガ教室だった。オフィスの隣にあったスポーツクラブに山本さんは残業時にシャワーを浴びるため通っていた。そしてふと目に止まったのがヨガ教室のチラシだった。体に良いことをしてみようと何気なく通い始め、それから何回か行く内に、山本さんの心身に微妙な変化が生じ始めた。ヨガを通して体に向き合ったことで、それまで感じない様にしていた違和感が徐々に現れ出したのだ。

山本さんはヨガ教室を機に、幸せとはなんなのか、なにが自分の心にとって、そしてビジネスにとって本当に必要なことなのかを、再び考え始める様になった。残業を抜け出してヨガ教室に行くと、みんな幸せそうな顔をしている。ヨガはシャツとパンツとマットさえあればできる。お金もモノも大していらない。それでもみんな満たされた顔をしている。一方、ヨガ教室を終えオフィスに戻ると、みんな死にそうな顔をしている。いい服を着て、いいバックを持って、お金をたくさん持っているにも関わらず。結局幸せは、外に求めるものではなく、自分の内側に在るものなのではないか。ビジネスにしても、自分がやっていることはいかに相手から奪うか。そうではなく、このヨガ教室のように、お客である自分が幸せを感じて、その対価としてお金を払う。サービスを受け取った方も、提供した方も幸せになれる。それが本来のビジネスの在り方なのではないか。山本さんの中で、幸せとはなにか、ビジネスとはなにかというその本質が見えてきた。

それから、山本さんはヨガの奥にあるその世界観や精神性、そして宗教、心理学を独自に学ぶようになった。そして起業した友人にアドバイスを求められれば、学んだスピリチュアルの観点から相談にのり、講演を依頼されれば学んだことを話し、その講演がきっかけとなって本を出版することとなった。そのような活動を経て、山本さんは会社を起業することにした。

違和感を手放す
宇宙に愛されているという確信

違和感を麻痺させることで、現状の生活が成り立つ場合は多い。しかし、山本さんは、違和感を感じてから、「潔く」と思える程すっぱりと仕事を辞め、自分の道に入って行った様に見える。そこにはどんな考え方があるのだろうか。

「自分は幸せに貪欲」だと、山本さんは言う。だから、いま自分の中で大きな位置を占めているものであっても、違和感を感じたら簡単に手放してしまう。そこには「絶対うまくいく」という確信があり、それは「宇宙に対する絶対的な信頼」から来ていると言う。

では、山本さんはどうやって自分の核となるその「宇宙に対する絶対的な信頼」を得ていったのか。山本さんは、頭から理解したその概念が、自分の身に起きた体験を通じて確信へと変わっていったと言う。きっかけは、親友の鬱病だった。ある事件がきっかけとなって鬱病となってしまったその親友は、山本さんをはじめ周りの人を容赦なく責め立てるなどの言動をとる様になった。心配して連れて行った病院では、アンケート調査による簡単な診察しか受けず、もらった薬も調べてみると強い副作用がある。病院にいかずに治す術を探し、カウンセリングなど様々な治療に連れて行ったが、どれも効果はなかった。追いつめられ、強制入院させるしか方法はないかとも思ったが、ある気付きを機に、自分の内側をニュートラルで、「クリア」な状態にして、彼に接することにする。彼の言動に対して反応せず、ただ愛で満たすことを考えて接する様にした。そうしてしばらくすると、あれだけ何をしても治らなかった病状が良くなり、治っていった。

エネルギーは共鳴し、だから自分がクリアになることで相手もクリアになる。頭で分かっていることを体感的に理解した瞬間だった。そのとき山本さんは、自分たちが宇宙に守られていること実感し、「宇宙に対する絶対的な信頼」は確信に満ちていった。

天野さん2

「ある」ことに目を向ける
辛いときこそ、生きる目的が鋭敏になる

山本さんが自身のパーソナルヒストリーを語った後、山本さんとの対談は、ある参加者の身の内話しから次第に参加者を交えてのダイアログとなっていった。

「なにがあって、なにがないのかは主観によるもの。自分の意識を『ない』に向けると、欠落感を感じ、他の人のことを見て嫉妬や妬みを感じて枯渇していく。『ある』に向けると、そこには豊かさや承認、繋がりある。「ある」に焦点を当てることが、幸せを感じる鍵となる。」

これは、ある参加者(P)が、仕事を辞めたことによって極度の金欠となり、その苦しさから「死」さえも感じる(いっそ死んだら苦しみから解放される)と発言したことを受けて、由佐さんが話した台詞だ。参加者Pは、そのような状況の中でも、いまここにいて、参加者たちに出会えていることを「いまある幸せ」と言い、自己資本の問題はあるにせよ、絵本屋さんをやりたいと話す。彼にとって、絵本とは、「生き方そのものを語る」ものであって、それによって勇気づけられ、幸せを感じるものなのだ。

由佐さんと同じことを、山本さんも表現を変えて話す。なにか辛い経験があるとき程、自分が宇宙から愛されていることに気づくチャンスである。そういった時にも、太陽は無限のエネルギーを注いでくれているし、空を見上げれば美しい空が広がっている。自分の中にすべてがある。辛い状況は、むしろ宇宙が与えてくれたギフト。どういう出来事もすべて必然で、最適なことが最適なタイミングで起きているだけであると言う。

由佐さんはギリシャで育った子ども時代、遊び道具もなにもなかったあの時代が、人生で最もクリエイティブで、満たされていた時であったことを振り返りながら、そして山本さんは、前述の親友との関係の中で導きだした自分のなりの真実の上に立ちながら、参加者Pにこれらの言葉を掛けた。

これらの言葉を受け止めた参加者Pは、「最近、太陽や植物にも感動したりする」と続ける。洗濯物を干せばすぐに乾く。その事実を感じて太陽の力に感動し、雑草を一つ見れば、それは太陽の力による造形物だと感じてまた感動する。そういう風に、「周りを取り巻く世界への捉え方が変わってくるという感覚が最近ある」と言う。

状況が危機的になればなるほど、自分の感覚は研ぎ澄まされ、物事の捉え方が変わっていく。参加者Pのこの言葉を受けて、参加者Kは、この一年のうちに自分の内面に起きた変化を話し始めた。仕事を辞めた去年の九月の頃は、自分も死んだらどんなに楽なんだろうって思っていた。「世界が分断された」という感覚だった。そこには友達からも親からも切り離された「孤独だ、なにもない」という世界しかなかった。そこから今に至る治癒のプロセスは、再び繋がりを思い出していくものだった。「これがない」と経験したことは、それを取り戻していくことで、「これがあるんだ」と世にもたらすことに転じていく。自分にとってそれは「繋がり」だった。彼はこの経験で、宇宙はその人に何かを気づかせるために試練を与えることもあるのだと思う様になったと言う。

そして、それを聞いた参加者Pは最後に「こういう状況になると、希望が鋭敏になってくる」と話した。絵本屋さんを通して、本音が言える場、環境や生き方を学べるリベラルアーツな場を創りたい。絵本作家さんを呼んで、デザインを学べる場や、絵本を作れる場も創りたい。少し想いを巡らすだけで、そういう希望が明確になってくる。目的や希望が明確になって、生きる希望が増してくる。そういう感覚があると話してくれた。

天野さん3

理解から確信へと変わる瞬間

山本さんへの質疑応答の中で、瞑想の方法や、家族との関係についての話しも上がったが、ここでは、今回の対談の核心部分である、「宇宙への絶対的な信頼」とはなにか、それがどのような行動に結びついて行くかについて紹介する。

宇宙への絶対的な信頼。それは前述のように山本さんの中で「なにがあっても絶対うまくいく」という確信に繋がり、その確信が様々なものの出発点であると言う。ではそれは具体的にどういうことか。山本さんは、一度収益の柱であったセミナーや講座を全部止めてしまったことがある。なぜなら、その事業に対して「自分が幸せに生きるというところからずれているという違和感」を感じたからだと言う。そうして会社の収入はゼロとなり、山本さんはしばらくの間映画や本を読んでのんびりとした時間を過ごしていた。そうしているうちに、新たに事業再生の仕事を依頼され、そこで収益を得るようになっていった。山本さんは、もしあのままセミナーを続けていたらきっと事業再生の仕事は受けられなかったと話す。傍から見れば、その仕事があったから、前の仕事を打ち切った様に見えるかもしれないが、実際はなんの当てもなくやめた。それが「宇宙への絶対的な信頼」がひとつの形となって現れた瞬間だった。

山本 敦之(やまもと あつし)
人を幸せにする会社総合研究所 株式会社 代表取締役社長

公認会計士。一橋大学商学部経営学科在学中に公認会計士第二次試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)時代に25歳の若さで30万部ベストセラー作家となる。その後、野村證券株式会社にてM&A・証券化等の投資銀行業務に7年間従事。個人的に友人にはじめたコンサルティング業務をきっかけに、講演・コンサルティング依頼が増え、2009年1月に独立。

「利益とは、幸せと喜びの対価である」という価値観に基づくアドバイスは、多くの経営者に支持され、業績をV字回復したクライアントも多い。山本塾卒業生は100名を突破。(現在は新規募集を行っておりません)現在は、「人を幸せにする会社」を創ることをミッションとして、組織開発コンサルティング、リーダー育成、エグゼクティブ・コーチング等を軸に活動中。

主な著書に、日本で一番売れている会計入門書30万部ロングセラー 『会計のことが面白いほどわかる本』(中経出版)を始め、『価値を創造する会計』(PHP研究所)、 『君を幸せにする会社』(日本実業出版社)『みんなが幸せになる「お金」と「経済」の話』(すばる舎)、『宇宙とつながる働き方』(総合法令)最新刊『宇宙を感じて仕事をしよう』(サンマーク出版)『The spiritual way of business – in harmony with cosmos -』(『宇宙を感じて仕事をしよう』英訳版)などがある。